コロナと中医・漢方 ~中医ガイドラインを読む~ 回復期

 

 『中国新型冠状病毒肺炎診療方案第七案』には、中東症・重症・重篤などに対する記載もありますが、これらは後回しにします。

 今回は、回復期を取り上げます。

【 原文 】

2.6 回復期
(1)肺脾気虚証
臨床症状:息が短く,倦怠疲労,食欲不振,悪心嘔吐,胸腹部のつかえ,排便に力が入らない,便が緩く排便不快,舌は淡,腫大,舌苔は白膩。
推奨処方:法半夏9g,陳皮10g,党参15g,炙黄耆30g,炒白朮10g,茯苓15g,藿香10g,砂仁6g(後下),甘草6g
服用法:1日1剤,400mLの水で煎じ,朝夕2回に分けて服用する。

(2)気陰両虚証
臨床症状:疲労,息切れ,口の乾燥,口渇,動悸,多汗,微熱または平熱,喀痰の少ない乾性咳嗽。舌は乾燥して水分が乏しく,脈は細または虚,無力である。
推奨処方:南北沙参各10g,麦冬15g,西洋参6g,五味子6g,生石膏15g,淡竹葉10g,桑葉10g,芦根15g,丹参15g,生甘草6g
服用法:1日1剤,400mLの水で煎じ,朝夕2回に分けて服用する。

 

【 解説 】

(1)心肺気虚症

 中医で考える機能の単位である五臓(肝・心・脾・肺・腎)のうち、心と肺の気虚(エネルギー不足)による症状です。

 長い闘病や咳・喘息などのため、『心』と『肺』のエネルギーを消耗する、高齢で体質が弱いなどの原因によって引き起こされます。

 動悸・咳・喘息と『気虚』の症状を伴うことがポイントです。

 

【 臨床症状 】

  症状を表にまとめます。 

【 表1 】

症状

所見

全身

呼吸器

口・舌

疲労,動悸,多汗,微熱または平熱

息切れ,喀痰の少ない乾性咳嗽

口の乾燥,

口渇舌は乾燥して水分が乏しい

脈は細または虚,無力

【 推薦処方 】

推奨処方:法半夏9g,陳皮10g,党参15g,炙黄耆30g,炒白朮10g,茯苓15g,藿香10g,砂仁6g(後下),甘草6g

 推奨処方に関して、日本で類似のエキス製剤を探すなら、素直に六君子湯でしょうか。以下に、生薬の対比を表で示します。

 

【表2】

推奨処方

六君子湯

二陳湯

四君子湯

防已黄耆湯

法半夏9g,

半夏4

半夏5

 

 

陳皮10g

陳皮2

陳皮4

 

 

党参15g

人参4

 

人参4

 

炙黄耆30g

 

 

 

黄耆5

炒白朮10g

蒼朮4

 

蒼朮4

蒼朮3

茯苓15g

茯苓4

茯苓5

茯苓4

 

藿香10g

 

 

 

 

砂仁6g(後下)

 

 

 

 

甘草6g

甘草1

甘草1

甘草1

甘草1.5

 

大棗2

 

大棗1

大棗3

 

生姜0.5

生姜1

生姜1

生姜1

 

 

 

 

防已5

 

(2)気陰両虚証

 

 『気虚』(エネルギーの不足)と、『陰虚』(体の『陰』の成分の不足)、2つが起こった状態です。

 疲れや乾燥症状などがみられます。

 

【表3】

症状

所見

全身

呼吸

口・舌

疲労、動悸,多汗,微熱または平熱

息切れ,喀痰の少ない乾性咳嗽

口の乾燥,口渇。

舌は乾燥して水分が乏しい

細または虚,

無力

 

 治療に関して、『虚』(足りない)場合には、『補』(補う)が基本です。

・『気虚』(気の不足)に対して、

 ①四君子湯、②六君子湯、③補中益気湯、など、

 『血虚』の所見があれば④人参養栄湯、⑤滋陰降火湯、または⑥滋陰至宝湯などを考えても良いかもしれません。④~⑥を使用する場合には、胃腸の症状に注意した方が良いでしょう。

・『陰虚』に対して、エキス製剤で使えるものは、日本ではあまりありません。

 ①六味丸

 個人的には、味麦益気湯(補中益気湯+麦門冬湯で代用)などを使うかもしれません。

 保険に収載されているエキス製剤で生薬の組み合わせを考えてみましたが、なかなか推奨処方の類似を作れませんでした。

 推奨処方に石膏がかなり入っており、例えば『兼用方』として白虎加人参湯を少し混ぜるなどは考えても良いかと思われます。

 

【表4】

推奨処方

補中益気湯

麦門冬湯

白虎加人参湯

四君子湯

六味丸

南沙参10g

 

 

 

 

 

北沙参10g

 

 

 

 

 

麦冬15g

 

麦門冬10

 

 

 

西洋参6g

 

 

 

 

 

丹参15g

人参4

人参2

人参1.5

人参4

 

五味子6g

 

 

 

 

 

生石膏15g

 

 

石膏15

 

 

淡竹葉10g

 

 

 

 

 

桑葉10g

 

 

 

 

 

芦根15g

 

 

 

 

 

生甘草6g

甘草1.5

甘草2

甘草2

甘草1

 

 

黄耆4

半夏5

 

 

 

 

当帰3

大棗3

 

 

 

 

柴胡2

粳米5

粳米8

 

 

 

蒼朮4

 

 

蒼朮4

 

 

大棗2

 

 

大棗1

 

 

陳皮2

 

 

 

 

 

升麻1

 

 

 

 

 

生姜0.5

 

 

生姜1

 

 

 

 

 

茯苓4

茯苓3

 

 

 

知母5

 

 

 

 

 

 

 

山茱萸3

 

 

 

 

 

地黄5

 

 

 

 

 

山薬3

 

 

 

 

 

沢瀉3

 

 

 

 

 

牡丹皮3

 

【 参考文献 】

【 参考文献 】

1)特別寄稿COVID-19 感染症に対する漢方治療の考え方 金沢大学附属病院漢方医学科 小川 恵子

http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/news/gakkai/covid19_kanpou_0319.pdf

2)【緊急寄稿】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する漢方の役割(渡辺賢治ほか)

https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=144263)杉並国際クリニックHP

3)その他、各製薬会社のHPなど