私が和歌山県支部の支部長をさせて頂いている、日本統合医療学会から『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックへの提言』が発表されました。

 補完代替医療に関係した様々な提言がなされています。宜しければ、参考になさってください。

 

 さて、コロナウイルス感染症において、伝統医学は何をするべきか?

 ひとつ前のブログでも触れましたが、私は主に以下の3点であると考えます。

① 感染の前に、伝統医学的な体質の改善などを通じて、感染症にかかりにくいとされる状態を目指す。

② 感染の初期において、コロナも含めて主に感染症の初期の治療を行い、罹病期間の短縮や重症化の予防を目指す。

③ 感染の治癒後において、体調を整え早期の回復を目指す。

 今後、主にこの3点を目標として記事をまとめていきます。

 

 今回は、『①感染の以前に、伝統医学的な体質の改善などを通じて、感染症にかかりにくいとされる状態を目指す。』ことに関連した記事です。

 東洋医学では、『体を維持する力が衰えると、体を害する状態が引き起こされやすい』と考えます。

 そのため、体を維持する力を高めることを重視します。

 

体質と養生 『気虚』

 

  • 気虚とは?

 疲れやすい、体がだるい、息切れがする、風邪をひきやすい……。そんな方は、漢方的には『気虚』かもしれません。

 「気虚」とは、「気」が「虚(不足)」している状態です。

 漢方では、「気」には、主に3つの意味があります。

  ①生命エネルギー: 元気・活気などのイメージ

  ②ガス: 気体・空気などのイメージ

  • 感情:気持ちなど、そんなイメージ

      (私の師匠のひとりである元日本東洋医学会会長の分類による)

 『気虚』の場合、①生命エネルギーと③感情のイメージが強いです。

 

 中国では、中華中医薬学会が発表している「気虚のスコア表」があります。

 よろしければ、お試しください。

 

    気虚スコア合計  ≧21  気虚タイプ

             20-18  傾向あり

             ≦17  違う

 

 スコア表の項目を見て頂くと、気虚タイプがどんなのか、なんとなくイメージがわいてきませんか?

 

  • ヨワヨワ型(気虚)の治療、基本編

 

 「気虚」の治療を説明する前に、「気」の成り立ちについて説明します。

 「気」を理解しておくと、治療の方針を立てやすくなります。

 「気」は、ずばり、「エンジンのイメージ」です!

 図で表現すると、次のようになります。

 

 人体の「気」は、大きく2種類に分類されます。

1)生まれ持った、「先天の気」

 先天の気には、二つの機能が大きく関わります。

  • 「脾」:消化吸収に大きく係わる機能

食物などを通じて人体に必要なものを吸収します。

 (2)「肺」:呼吸に大きく係わる機能

    呼吸を通じて、人体に必要なものを吸収します。

 実際には、「脾」の機能を高めて「気」を補うことが多いです。

2)生まれてから吸収・生成する、「後天の気」

 生命の誕生/成長/妊娠や出産/老化に大きく関わります。

 「腎」に蓄えられます。

 先天の気と後天の気は、相互に影響を与え合いながら生命を維持します。

 私は、エンジンとバッテリーの関係でイメージすれば理解し易いと思います。

 バッテリーがダメになれば、エンジンがかかりません。

 エンジンで発生したエネルギーの一部は、バッテリーに蓄えられます。

 どちらが欠けても、うまく機能しません。

 

 これらの関係を理解すれば、気虚(気の不足)の治療が見えてきます。

 「気」の生成には、人体の機能としては、「脾・肺・腎」が重要です。脾(消化吸収)と肺(呼吸)の機能を高め、バッテリーである腎を整えます

 ずばり、「気」の原料は、食べ物と空気!おいしい食事ときれいな空気が、元気の秘訣です!

 

  • 生活で気を付けること

 「気」の不足に対して、消化吸収の機能である「脾」の作用を高めて「気」を補うことは、治療の柱として重要です。

 食事に気をつかうのは大切ですが、精神的な養生も欠かせません。激しい怒りや考えすぎも、「気」の不足を引き起こします。精神的な安静を保ち、楽観的な考え方をすることは、治療においても非常に重要です。

 それに加えて、動きのゆっくりとした運動を取り入れることがおススメです。太極拳や呼吸法などを取り入れると良いでしょう。

また、足三里のツボをマッサージすることも、「気」を増やすことに有益です。

 

 

  • 気虚と食養生

 気虚の方におススメの食材として、味が甘く体を温める性質のものがおススメです。

 役に、生もの/辛いもの/味の濃いものは、あまりおススメではありません。

 

・おススメの食材

 粟、うるち米、もち米、扁豆、エンバク、ニンジン、アブラナ、シイタケ、豆腐、ジャガイモ、サツマイモ、牛肉、兎肉、鶏肉、卵、ヒラメ、ブドウ、ナツメ、ピーナッツ、など。

 これらの食材は、消化吸収の機能を高め、人体のパワーを補い、体を整えます。

・気虚の体質は、痰湿やお血の体質と合わさることがあり、それら対する食材をあわせて摂ることが必要な場合があります。人体のパワーを補う食材には、パワーの流れを良くする食材を合わせるとより有用です。

 

・おススメでない食材

 サンザシ、ブッシュカン、ヤシ、パクチー、胡椒、シソの葉、薄荷などは避けた方が良いとされます。

 蕎麦、キンカン、ダイダイ、生の大根、からし菜、ラッキョウ、菊花 等は控えめがおススメです。

 お酒とたばこも控えめに。

 

 この項目では、気虚に関するおススメの食材についていくつかピックアップしてまとめます。

 

1)ブドウ

(1)ブドウの性質

 ブドウは、ヨワヨワ型におススメの食材です。中国では、「水晶明珠」なんて別名もあります。

 中医学では、次のような性質があるとされます

・性は平、味は甘/酸

・「気」と「血」を補う。

・作用:①「気」を益す ②うるおいを益す ③体格を強くする(注1)。前の項目「基本編」で説明したように、「気虚」タイプでは、人体を維持する機能の単位である「腎」・「脾」・「肺」の作用が弱っていることが多く、ブドウはオススメの食材です。

(2)こんな方におススメ

 ブドウは、高血圧、浮腫、貧血、神経衰弱、関節痛、癌、疲労倦怠、寝汗などの症状がある人にオススメで、子供や妊婦さんなんかにも良いとされます。

 (3)おススメでない方

 逆に、糖尿病、便秘、胃腸の冷えが非常に強い場合には、食べ過ぎは禁物です。

 中医学では、海鮮・魚・大根とは食べ合わせの相性が良くないとされます。また、朝鮮人参とも一緒に食べるのは避けるべきと言われています。

 

(注1) 『 滇南本草』、『随息居飲食譜』など

 

2)ナツメ

(1)ナツメの性質

 ナツメは、中国ではありふれた食材ですが、日本ではあまり見かけません。

 インターネットで検索してみましたが、日本では主にドライフルーツの形で流通していて、北陸地方には栽培している場所もあるみたいです。

 棗は、古くから『五果』の一つ として珍重されてきました。

 『五果』は、桃・李・梅・杏・棗の5種類の果物を指します。

 中医学的には、

・味は甘く、微温

・五臓では、脾・胃・心・肝に作用

・作用:①消化吸収の機能を高める。 ②営血を養い精神を安定させる

③他の薬物の作用を穏やかにする。

(2)こんな方におススメ

 胃腸虚弱で食が細い場合や下痢気味の時、「気・血」の不足、栄養不良、不眠、神経衰弱、貧血気味でめまいがする、そんな方におススメです。

また、癌患者、特に放射線や抗癌剤による治療中には、棗を食べると良いそうです。がんの漢方治療では臨床的に癌と『冷え』の関連は強く、よく話を聞いてみれば多くの癌患者さんが冷えを訴えます。

 全体として、弱っていて疲れやすい人向けです。

 西洋医学的には、白血球の減少、血小板の減少、肝硬変、アレルギーなどにも良いというデータがあるそうです。

(3)おススメでない方

 むくみがあるなど、体内の水分代謝が悪い場合。腹部の膨満感がある場合。舌のコケが厚い、歯のトラブル等がある場合。

肥満、糖尿病などの生活習慣病

  こんな人は、食べ過ぎは避けるべきです。

            

3)ピーナッツ

 (1)ピーナッツの性質

 ピーナッツは、中医学的に次のような作用があるとされます。

味は、甘。性は、平。

・五臓の「脾」と「肺」の機能を高め、体力を増強する。

・作用:①消化吸収の機能を高める。 ②呼吸を潤し痰をなくす。

  • 「気」を養い整える。  ④むくみをなくす、

⑤血を止め母乳を益す

(2)おススメの方

 「気」が不足しやすい方は、お腹や呼吸器が弱くて疲れやすい場合が多く、そんな方にはピッタリの食材です。

 また、むくみや、のどの調子が悪い時にも有効です。

 科学的な研究では、食欲不振や咳、母乳の出が悪いこと、高血圧、高脂血症、動脈硬化などに対して有効であるというデータがあるそうです。

おすすめの食べ方は、煮込むこと。

(3)おススメでない方

 痛風や胃潰瘍、慢性胃炎、慢性的な腸疾患、糖尿病や胆のう切除後の方にはおススメではありません

 また、高齢者は食べすぎに注意が必要です。

 

 

【 参考文献 】

1)李其忠 刘庆华著.人分九种吃不同.中国轻工业出版社.2012

2)李其忠编著.中医基础理论纵横解析.人民卫生出版社.2006