阪急神戸線「夙川駅」より徒歩約2分、西宮市羽衣町の「漢方内科・内科しずかクリニック」です。

頭痛

頭痛の種類と分類について

緊急性が高い頭痛

頭痛の原因となる病気は、非常に多くあります。頭痛の診断や治療を考える際には、まず、緊急で対処する必要がある頭痛の特徴を知ることが大切です。症状として、急に発生した頭痛や人生最大の頭痛には、至急に病院を受診することが必要な病気の場合があるため、特に注意が必要です。

また、いつもと様子の異なる頭痛、頻度と程度がひどくなっていく頭痛、50歳以上で初めて起こった頭痛、神経学的な症状を伴う頭痛、がんや免疫不全の病態を有する患者の頭痛、精神症状を有する患者の頭痛、発熱/項部硬直(首の動きの異常)/髄膜刺激症状を伴う頭痛に対しては、積極的に検査を勧める必要があります。

特に注意が必要な頭痛

特に注意が必要な頭痛
1)突然に起きる頭痛
特に、「何をしているときに頭痛が起きたか」がはっきりしている頭痛は、危険な頭痛のことがあります。「テレビを見ていて、このシーンで急に頭が痛くなった」などという場合には、要注意です。
2)人生最大の頭痛
「今までの人生の中で一番痛い」という場合には、緊急性の高い頭痛の場合があります。考えうる限り最悪の痛さを10点として、10点満点の中で8点以上の場合には特に注意が必要です。

緊急で病院を受診することが必要となる危険な頭痛として、くも膜下出血と髄膜炎が重要です。
以下に、この二つのタイプの頭痛について説明します。

①くも膜下出血
くも膜下出血

くも膜(脳や脊髄をおおう膜のひとつ)と脳との隙間にある血管が切れて起こる出血です。多くの場合、脳動脈瘤(脳の動脈にできた瘤の様なふくらみ)からの出血が原因となります。頭痛の原因となる疾患の中でも危険なものの代表格で、適切な時期に対処されなかった場合には高い確率で生命や生活の質に重大な影響を及ぼすことが知られており、特に注意が必要な疾患です。

以下の特徴がある場合には、要注意です。

  • 症状

    典型的には、突然で人生最悪の頭痛が生じます。「殴られたようにいきなり痛くなる」場合には要注意です。また、比較的低確率ですが頭痛を起こさない場合もあります。

  • 診断

    症状や身体診察で可能性を疑い、頭部CTや腰椎穿刺(背中から背骨の間に針を刺して中の液体を検査する)などを行います。

  • 治療

    緊急の手術が必要な場合があります。

②髄膜炎
  • 症状

    「風邪をひいて、頭痛が徐々にひどくなってきた」という場合などに、注意が必要です。適切な時期に治療をしなかった場合、生活の質が大きく低下したり、最悪の場合には生命にかかわることもあります。

  • 診断

    腰椎穿刺(背中から背骨の間に針を刺して液体を検査する)で髄液を取り、髄液の中の細胞や細菌などを調べます。

  • 治療

    抗生物質や抗ウイルス薬などを中心に、治療を行います。
    また、脳腫瘍では横になっていると頭痛が強くなる場合があります。これは、横になると脳の圧力が上がるために、頭痛がひどくなりやすいからです。症状が続いている場合には、医師にご相談ください。

脳以外の原因で頭痛が起こることもあります。次のような場合には、緊急で対処が必要な場合があります。

①緑内障
緑内障

眼圧(眼球の中の圧力)が高くなることで起こり、日本の失明の一番の原因はこの緑内障であるとされています。眼圧が高くなると眼の神経がダメージを受けるために、注意が必要です。眼圧が急に高くなった場合、頭痛や吐き気が起こることがあり、頭痛が起きた際には緑内障にも注意しておく必要があります。

②帯状疱疹

頭痛が、帯状疱疹など皮膚の病気から起こっていることがあります。首から上の帯状疱疹は、中枢神経に症状が及ぶ可能性があり、部位によっては失明につながることもあります。髪の毛に隠れた部分の発疹などは、簡単に見つけにくいことがあり、注意深い診察が必要です。また、帯状疱疹の患者の約2割は、皮膚の症状がなくなった後でも痛みが長引くとされています。

頭痛の原因は非常に多く、本稿ではとても書き尽くせませんが、まずは最優先で注意すべき疾患を挙げました。
次に、代表的な慢性の頭痛を挙げます。

慢性の頭痛

①片頭痛
片頭痛

日本人の片頭痛の有病率は8.4%で、前兆のあるものが2.6%、前兆のないものが5.8%とされます。また、片頭痛のある方のうち74%が日常生活に支障をきたしています。性別/年齢別にみると、30歳代の女性で20%と最も有病率が高く、40歳代の女性でも約18%の有病率があります。医療機関への受診率は30%程度とされ、症状で困っているが受診していない方がかなりの数いらっしゃいます。

  • 症状

    主に片側(側頭部)が強く痛むことが多く、「ズキンズキン」とした拍動性のある痛みが特徴です。吐き気を伴うこともあります。

  • 原因

    片頭痛の原因は、いまだ確定されていません。血管説/神経説/三叉神経血管説などが提唱されています。

  • 前兆

    片頭痛には前兆のあるタイプがあり、以下のような症状が知られています。

    1)典型的前兆
    視覚障害/感覚障害/言語障害
    2)片麻痺性片頭痛
    1)のほかに、運動麻痺(脱力)
    3)脳底型片頭痛
    構音障害/回転性めまい/耳鳴り/難聴/複視/視覚障害/運動失調/意識レベルの低下/両側性の感覚障害
  • 誘発因子

    1)精神的因子
    ストレス/精神的緊張/疲れ/寝不足または過眠
    2)内因性因子
    月経周期
    3)環境因子
    天候の変化/温度差/頻回の旅行/におい
    4)食事性因子
    空腹/アルコール

    日常生活では、これらの要素に気を付けていただくことが重要です。

  • 治療

    薬物療法が中心です。アセトアミノフェン/非ステロイド系抗炎症薬/エルゴタミン/トリプタン/制吐薬などを症状に合わせて用いることが推奨されています。薬の使用法として、飲み薬/注射薬/点鼻薬など様々な使用法があります。

②緊張性頭痛
緊張性頭痛

一時性の頭痛の中で最も多く、また女性に多い傾向があります。有病率は研究によって大きな差があり、一年の有病率は21.7~86.5%とされます。日本の緊張性頭痛の有病率は22.3%(反復性20.6%、慢性1.5%)で、全体の29.2%が日常生活に支障をきたしています。慢性の緊張性頭痛に関しては、40.5%が日常生活に支障をきたしています。

  • 症状

    頭の両側や後頭部など、「ハチマキ」を巻く部分がギューッと締め付けられるような、ずっしりと重苦しい痛み方が特徴です。肩や首の“こり”を伴うこともあります。

  • 原因

    正確な発症の原因は、明らかになっていません。

  • 誘因

    肥満/運動不足/喫煙が危険因子という報告がありますが、確立されたものではありません。

  • 治療

    急性期/薬物治療に関して、薬物乱用性頭痛を避けるために、1週間に2~3日以上の薬の使用は避けるように注意すべきとされます。ストレスや精神的な緊張は危険因子となるため、これらに対する対処が必要となる場合があります。
    また、運動不足やうつむきの姿勢も、緊張頭痛を起こす因子とされ、対処を考える必要があります。鎮痛薬として、各種の消炎鎮痛薬を用いる場合が多いのですが、胃腸障害などに注意が必要です。
    予防として、抗うつ薬等の内服や、理学療法/鍼灸療法/運動療法などがあります。

③群発頭痛
群発頭痛
  • 症状

    短時間/片側性の頭痛発作で、副交感神経系の自律神経症状(膜の充血/流涙/鼻漏など)を伴うことが特徴です。激しい頭痛が数週間~数か月の期間群発し、夜間や睡眠中に起こりやすいことも知られています。定期的に起こることもあります。
    有病率は、56~401人/10万人とされ、20~40歳代で発症し、男性が女性の3~7倍多いと報告されています。

  • 原因

    三叉神経の過剰興奮が副交感神経の興奮を起こすことや、視床下部に原因を求める説などがあります。

  • 治療

    スマトリプタンの皮下注射、純酸素の吸入などで治療します。

  • 予防

    アルコール/ヒスタミン/ニトログリセリンにより誘発されますので、これらを避けることが重要です。また、喫煙家に多いという報告がありますので、禁煙をお勧めします。

漢方を用いた頭痛の治療

慢性頭痛の診療ガイドライン2013においても、漢方薬の有用性が取り上げられています。同ガイドラインでは、特に呉茱萸湯/桂枝人参湯/釣藤散/葛根湯/五苓散に関する科学的なデータが載せられています。これらの研究では、個々の研究のデザインの違いもあり、一律に評価することはかなり困難です。

漢方を用いた頭痛の治療

個人として、漢方的な診断をしっかりと行って症状に合った治療を選択することで、有効性は研究で示されたデータよりも更に高まると考えています。

漢方薬の中には保険の適応になっている処方や生薬があります。また、現在の日本では、漢方薬はエキス製剤を用いた治療が中心になっています。頭痛の漢方治療を考えるうえで、保険に収載されているエキス製剤の漢方薬をうまく使いこなすことがまず重要になります。

ここでは、健康保険の規定に表記のある漢方薬をまとめ、その後に漢方的な頭痛の治療をまとめます。

健康保険に規定のある漢方薬

保険適応を説明した文章の中に「頭痛」の文字を含むものを以下に示します。

  • かっこんとう葛根湯
  • かっこんかじゅつぶとう葛根加朮附湯
  • くみびんろうとう九味檳榔湯
  • けいしかかっこんとう桂枝加葛根湯
  • けいしにんじんとう桂枝人参湯
  • けいしぶくりょうがん桂枝茯苓丸
  • けいしぶくりょうがんかよくいにん桂枝茯苓丸加薏苡仁
  • ごしゃくさん五積散
  • ごしゅゆとう呉茱萸湯
  • ごれいさん五苓散
  • さいこけいしとう柴胡桂枝湯
  • さんおうしゃしんとう三黄瀉心湯
  • せんきゅうちゃちょうさん川芎茶調散
  • ちょうとうさん釣藤散
  • つうどうさん通導散
  • とうかくじょうきとう桃核承気湯
  • とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう当帰四逆加呉茱萸生姜湯
  • とうきしゃくやくさん当帰芍薬散
  • とうきしゃくやくさんかぶし当帰芍薬散加附子
  • はんげびゃくじゅつてんとう半夏白朮天麻湯
  • ぶしりちゅうとう附子理中湯
  • まおうとう麻黄湯
  • まおうぶしさいしんとう麻黄附子細辛湯
  • りょうけいじゅつかんとう苓桂朮甘湯
  • など

漢方薬を用いる際には、頭痛以外の症状に注目して漢方薬の適応となる病態を把握することが重要です。先に名前が挙がった薬を分類し、各々の使用法と注目すべきポイントをまとめます。

①月経関連の頭痛によく用いるもの

  • けいしぶくりょうがん桂枝茯苓丸
  • けいしぶくりょうがんかよくいにん桂枝茯苓丸加薏苡仁
  • とうきしゃくやくさん当帰芍薬散
  • とうきしゃくやくさんかぶし当帰芍薬散加附子
  • つうどうさん通導散
  • とうかくじょうきとう桃核承気湯
  • など

これらは産婦人科領域でも重要な処方であり、以下に主な薬を用いる際の注目点をまとめます。

当帰芍薬散/桂枝茯苓丸/桃核承気湯は、産婦人科領域の治療で主力となる処方です。
以下の様な特徴があります。

  当帰芍薬散 桂枝茯苓丸 桃核承気湯
症状 冷え症 むくみ 体力は弱め 幅広い適応 精神症状 便秘 体力は強め
身体所見 舌に歯型あり(歯圧痕)
腹部振水音(腹部診察で胃部を叩くとポチャポチャ音がする)
舌下静脈の怒張が強い
臍傍の圧痛点
舌下静脈の怒張が強い
臍傍圧痛点(左腸骨窩に圧痛/擦過痛)
桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)
桂枝茯苓丸に生薬・薏苡仁(ヨクイニン)を加えたもの、ニキビなどの皮膚症状を伴うことが多い。
当帰芍薬散加附子(とうきしゃくやくさんかぶし)
当帰芍薬散に生薬・附子を加えたもの。当帰芍薬散で冷えの強いものに。
通導散(つうどうさん)
産婦人科の諸症状(月経困難や更年期障害)/便秘/高血圧の随伴症状などのある場合。

②胃腸虚弱を伴うときに良く用いるもの

胃腸虚弱を伴うときに良く用いるもの
半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんとう)
胃腸が弱く頭痛やめまいがある場合。
呉茱萸湯(ごしゅゆとう)
半夏白朮天麻湯で、嘔気の激しい場合。発作的に起こる激しい頭痛。
苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
胃腸虚弱で、めまい/動悸/のぼせ等を伴う場合。
桂枝人参湯(けいしにんじんとう)
冷え症で下痢しやすく、胃腸の弱い場合。人参湯によく似た処方。
附子理中湯(ぶしりちゅうとう)
消化器系の症状があり、冷えを伴う場合。理中湯は人参湯の別名で、附子を加えたもの。

③冷えを伴うもの

冷えを伴うもの
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
手足の冷え/しもやけ/特に冷えの刺激で増悪する痛みを目標に。
附子を含む処方

◎生薬として附子を含む処方

葛根加朮附湯(かっこんかじゅつぶとう)/附子理中湯(ぶしりちゅうとう)/当帰芍薬散加附子(とうきしゃくやくさんかぶし)/麻黄附子細辛 湯(まおうぶしさいしんとう)など

冷えが強い時には、基本となる処方に附子を加えることも多い。

④風邪の時の頭痛によく用いるもの

保険病名の中に風邪に関したものを含む漢方薬は、風邪の頭痛のみに使うものではありません。
風邪に関連した漢方薬を使用する際には、自然発汗の有無を確認することがまず重要です。

風邪の時の頭痛によく用いるもの
1)自然発汗なし(生薬として、桂枝+麻黄をよく用いる)
葛根湯(かっこんとう)
肩から首筋や背中の凝りや痛みが重要な目標。肩こりをめやすとして緊張性頭痛に用いる場合がある。
葛根加朮附湯(かっこんかじゅつぶとう)
葛根湯に附子、蒼朮を加えたもの。
葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)
葛根湯に生薬・川芎(センキュウ)と辛夷(シンイ)を加えたもの。保険病名に頭痛はないが、蓄膿症などを伴う頭痛によく用いる。
麻黄湯(まおうとう)
体力がしっかりしていて、体の痛み/腰痛/関節痛などがある場合。
2)自然発汗あり
桂枝加葛根湯(けいしかかっこんとう)
葛根湯から生薬・麻黄を除いたもの。虚弱で葛根湯を用いて胃腸が悪くなる場合などに。
柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
小柴胡湯に桂枝湯を混ぜたもの。ストレスに関連した頭痛などが目標。
麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)
冷えや体のだるさを伴う場合によく用いる。
その他
九味檳榔湯(くみびんろうとう)
脚気(浮腫/動悸/呼吸困難)、神経症、更年期障害などを伴う場合。
五積散(ごしゃくさん)
上半身の熱感と下半身の冷え、股や腰や下腹部の痛みを伴う場合。
五苓散(ごれいさん)
雨の日など天候の変化でひどくなる頭痛。漢方的には水毒(体液の代謝障害)を目標に広く活用される。
三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)
高血圧の随伴症状/のぼせ気味/興奮や不安等の精神症状/便秘のある場合。
川芎茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)
頭痛に広く用いられる。
釣藤散(ちょうとうさん)
朝方の頭痛/神経質/めまいや肩こり、高血圧の傾向がある場合。

漢方的な考えを用いた頭痛治療

漢方的な治療を考える際、頭痛を目標にするだけではなく、漢方的な病態を考えて治療法を選択することが重要です。漢方では、人体を『気(き)/血(けつ)/水(すい)』の3要素に分類して病態を考えることが多いので、それに基づいた形で頭痛の治療をまとめます。

①「水(すい)」に関連した頭痛

1)水毒

漢方では、体液の代謝異常を「水毒(すいどく)」と呼びます。
また、「水毒」を起こし易い要素として、「水」の代謝に関連した要素を含めて治療することが重要です。例えば、消化や吸収に関連した機能を「脾(ひ)」と呼びますが、この機能が十分でないと体液の代謝異常を起こし易いとされ、頭痛の治療の際に消化吸収に関連した胃腸の機能を高めることを重視することがあります。消化吸収の機能が高まれば人体の自律的な調整能力が高まり、様々な症状が起こりにくくなるとされますが、実際の治療でもこのことを実感する機会が多くあります。

よく用いられる漢方薬
  • ごしゅゆとう呉茱萸湯
  • ごれいさん五苓散
  • はんげびゃくじゅつてんとう半夏白朮天麻湯
  • けいしにんじんとう桂枝人参湯
  • とうきしゃくやくさん当帰芍薬散
  • など

②「血(けつ)」に関連した頭痛

1)お血/血虚

「血(けつ)」は、特に産婦人科領域の治療で重視される要素です。また、慢性的な病態では、「お血(漢方で考える血のめぐりが悪い病態)」が関与していることが多いとされ、標準的な治療に「血」の治療を併用する場合が多くあります。

よく用いられる漢方薬
  • とうきしゃくやくさん当帰芍薬散
  • けいしぶくりょうがん桂枝茯苓丸
  • とうかくじょうきとう桃核承気湯
  • かみしょうようさん加味逍遙散
  • にょしんさん女神散
  • つうどうさん通導散
  • など
2)血熱

また、のぼせや赤ら顔がある場合には、「血熱(けつねつ)」があると判断し、以下の漢方薬を使う場合があります。

よく用いられる漢方薬
  • おうれんげどくとう黄連解毒湯
  • さんおうしゃしんとう三黄瀉心湯
  • うんせいいん温清飲
  • など

③「気(き)」に関連した頭痛

漢方で考える「気」は、生命エネルギー(元気など)/感情(気持ちなど)/ガス(気体)の3つの要素に分類して考えるとイメージしやすいとされます。気に関連した病態として、気の不足(気虚)と気のめぐりの異常(気うつや気逆)があります。

1)気逆/気うつ

のぼせ/動悸/不安感に関係した頭痛では、「気」のめぐりが悪いと考えることがあります。

よく用いられる漢方薬
  • りょうけいじゅつかんとう苓桂朮甘湯
  • はんげこうぼくとう半夏厚朴湯
  • こうそさん香蘇散
  • など
2)柴胡剤

生薬・柴胡(サイコ)を含む処方で、治療薬の選択には漢方的な診察が重要です。

よく用いられる漢方薬
  • だいさいことう大柴胡湯
  • さいこかりゅうこつぼれいとう柴胡加竜骨牡蠣湯
  • しぎゃくさん四逆散
  • しょうさいことう小柴胡湯
  • さいこけいしとう柴胡桂枝湯
  • さいこけいしかんきょうとう柴胡桂枝乾姜
  • ほちゅうえっきとう補中益気湯
  • かみしょうようさん加味逍遙散
  • よくかんさん抑肝散
  • よくかんさんかちんぴはんげ抑肝散加陳皮半夏
  • など
3)気虚

疲れなどに関連した頭痛では、気虚(気のエネルギーの不足)として治療することがあります。

よく用いられる漢方薬
  • じゅうぜんたいほとう十全大補湯
  • かみきひとう加味帰脾湯
  • きひとう帰脾湯
  • など

一歩進んだ頭痛治療、漢方にできること

医療保険に収載された漢方薬を中心に、頭痛の治療薬とその特徴についてまとめました。頭痛に対して様々な治療薬があり、頭痛を目標にするだけでないきめ細かい治療体系となっています。また、漢方は現代医学的な検査法や治療法が確立する以前に成立した医学体系であるため、現代医学とは異なる立場で様々な治療を考えることができる場合があります。

一歩進んだ頭痛治療、漢方にできること

実は、漢方における「証(治療の対象となる漢方的な病態)」は様々な要因で変化するため、治療もそれに合わせて柔軟に変化させていく必要があります。例えば、今まで有効であった薬の効き目が悪くなったり、逆に今まで効き目が薄かった薬が効くようになったりすることがあります。また、頭痛のつらい症状を治療するだけでなく、頭痛を起こしている体質的な部分に対する治療も欠かせません。実際に臨床の場において、頭痛で悩む方を加療する中でぶつかったこれらの問題が、私が上海中医薬大学への留学を決意した大きな理由でもあります。私は中国で中医基礎理論の大家で養生学にも通じた李其忠導師に教えを受けることができ、体質的な治療に関して視野を広げていただきました。

漢方では、治療と診断は表裏の関係にあり、治療の効果をみながら病態の変化を評価しつつ柔軟できめ細かい治療をしていくことが重要です。頭痛の治療は奥深く、現代医学的に緊急性の高い疾患も視野に入れつつ様々な治療法を柔軟に組み合わせて治療に当たる必要があります。

つらい頭痛の悩みに対してお役に立つことができたなら、医学医療に携わる者として望外の幸いです。

【参考文献】
  • ・日本頭痛学会.慢性頭痛の診療ガイドライン.
  • 日本眼科学会
  • ・矢數道明.臨床応用漢方處方解説.創元社.2001年第十一刷
  • ・松田邦夫・稲田一元.漢方治療のファーストステップ.南山堂.2003年
  • ・佐藤弘.漢方治療ハンドブック.株式会社南江堂.2003年第4刷
  • ・寺沢秀一.研修医当直御法度百例帖第2版.株式会社三輪書店.2013年
  • ・林寛之.Dr.林の当直裏御法度第2版.2018年
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