阪急神戸線「夙川駅」より徒歩約2分、西宮市羽衣町の「漢方内科・内科しずかクリニック」です。

更年期障害

更年期障害

更年期障害とは

女性の月経が永久的に停止した状態を閉経と呼びます。閉経の診断は後から振り返る形でしかできず、月経が連続して12か月にわたって起こっていない時点から1年前を閉経とします。日本人の閉経の年齢は50歳ごろである場合が多いのですが、個人差があります。

更年期とは、閉経から前後の5年間、合計10年間の時期を指します。この時期に様々な症状がみられることがあり、他の病気によるものでないものを更年期症状と呼びます。更年期症状がつらく日常生活に支障をきたしている場合を更年期障害と呼びます。

更年期障害の診断は多くの場合において除外診断で、うつ病などの気分障害やパニック障害などの不安障害、甲状腺機能の異常などを除外することが重要です。

更年期障害とは

原因

①エストロゲン

更年期障害の主な原因は、卵巣から分泌される女性ホルモンの一種であるエストロゲンの変化です。更年期の時期に、エストロゲンの濃度は大きく上下しながら全体として低下していきます。

②その他

それ以外にも、身体的な変化(加齢など)/社会における様々な要素(仕事や家庭など)/心理的な要素(性格など)、多くの要素が関連するとされています。
これらの要素が相互に複雑に影響しあいながら、様々な症状が生じます。

更年期障害の症状

更年期障害の症状は非常に多彩で、一説には300種類以上の症状があるとされています。一般に、日本人における特徴は、ホットフラッシュや発汗などに比較して易疲労感や肩こりが多いこと、精神的な症状が多くみられることです。

更年期障害の症状は、大きく3つのタイプに分類されています。

①血管の拡張と放熱に関係した症状

ほてり/のぼせ/ホットフラッシュ/発汗 など

②身体症状

めまい/どうき/胸が締め付けられるような感じ/頭痛/肩こり/腰や背中の痛み/冷え/しびれ/疲れやすさ など

③精神症状

気分の落ち込み/意欲の低下/イライラ/情緒の不安定/不眠 など

更年期障害の治療について

更年期障害の治療について

更年期障害は、身体的/心理的/社会的な因子が相互に複雑に影響しあいながら発症します。そのため、まずは診察を十分に行い、詳しい問診などを通じて個々の患者さんの病態を考えることが大切です。影響を与えている生活習慣を改善し、心理的な療法なども行います。それを行って改善しない場合には、薬物療法を行います。

更年期障害の薬物療法は、大きく3つに分類して考えることができます。

1)ホルモン補充療法

女性ホルモンがゆらぎながら減少していくことは、更年期障害の主要な原因です。減少したホルモンを補うホルモン補充療法は、非常に理にかなった治療法です。ホットフラッシュなどの症状のほかにも、精神症状にも効果があり、多くの研究では80%程度の有効率があるとされています。手術で子宮を摘出していない場合など、子宮がある場合にはエストロゲンに加えて黄体ホルモンの併用が必要です。

具体的な方法として、経口的な内服薬/経皮的な貼り薬や塗り薬など様々な使用法があります。
副作用として乳がんの発症リスクなどが指摘されていましたが、近年では肥満や飲酒など生活習慣に関連したリスクと同等かそれ以下であるとされています。

また、更年期以降に生じる心臓/血管の病気や骨粗しょう症などの予防効果があり、治療法としての見直しが進んでいます。

2)漢方を用いた治療

漢方を用いた治療

当帰芍薬散/加味逍遙散/桂枝茯苓丸/桃核承気湯などを中心に、多くの漢方薬を用いた治療を行います。詳しくは、この後の項目でまとめます。

3)向精神薬

更年期障害では、気分の落ち込み/イライラ/情緒の不安定など多くの精神的な症状がみられます。特に欧米では、抗うつ薬としても使用される選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン/ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)が利用されてきました。精神症状以外にも、ほてりや発汗などの症状にも有効です。特に痛みのある場合にはSNRIの使用が良いとする意見もあります。

うつの症状がつらい場合、特に希死念慮(死にたいという気持ち)がある場合には、早急に心療内科や精神科など専門家への受診が必要です。

また、上記の3つ以外にも以下のような治療法があります。

4)サプリメント

大豆イソフラボンの代謝物であるエクオールは、日本女性におけるホットフラッシュや肩こりなどへの効果が示されています。その他にも様々なサプリメントがありますが、個々の効果に関する科学的な証拠(エビデンス)に関しては、厚生労働省のHPなどをご確認ください。

5)薬を用いない治療

カウンセリングや心理療法も有効です。様々な症状によるつらさを受け止めることは重要であり、十分に話を聞くだけで症状が軽快することもあります。

漢方を用いた更年期障害の治療

日本の伝統医学である漢方や中国の伝統医学において、産婦人科や小児科の歴史は長く、紀元600年ごろには既に独立した項目として扱われていました。その頃の時代に活躍した伝説的な名医・孫思邈(そんしばく)は、その著書の中で産婦人科関連の治療を巻頭の部分で扱っており、昔から非常に重視されてきたことがうかがえます。

まずは、日本産科婦人科学会の症状分類に基づいて代表的な漢方薬による治療を整理し、その後に漢方的な考え方に基づいた治療を説明します。

1)血管の拡張と放熱に関係した症状

血管の拡張と放熱に関係した症状

ほてり/のぼせ/ホットフラッシュ/発汗 など

よく用いられる漢方薬
加味逍遙散(かみしょうようさん)
ホットフラッシュの第一選択薬。発作的なのぼせと冷えが混在する場合
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
冷え症/むくみ/体力は弱めの場合
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
症状が固定的/のぼせ/比較的体力がある場合
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
症状は動的/便秘/精神症状 等がある場合
女神散(にょしんさん)
のぼせ/めまい/精神症状/症状が固定的な場合
黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
比較的体力がある/のぼせ/イライラ 等がある場合
温清飲(うんせいいん)
黄連解毒湯に皮膚の乾燥 等がある場合
温経湯(うんけいとう)
上半身の熱感と下半身の冷え/唇の乾燥/掌のほてり 等がある場合

2)身体症状

身体症状

めまい/どうき/胸が締め付けられるような感じ/頭痛/肩こり/腰や背中の痛み/冷え/しびれ/疲れやすさ など

よく用いられる漢方薬
加味逍遙散(かみしょうようさん)
ホットフラッシュ/様々な症状が混在
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
頭痛/めまい/肩こり/動悸/冷え/むくみ/体力は弱めの場合
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
頭痛/めまい/のぼせ/肩こり/冷え/比較的体力がある場合
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
症状は動的/便秘/精神症状 等がある場合
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
頭痛/腰や背中の痛み/冷え 等がある場合
八味地黄丸(はちみじおうがん)
腰や背中の痛み/冷え/疲れやすい/頻尿 等がある場合
牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
八味地黄丸よりも症状が重い/しびれ 等がある場合
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
疲れやすい/食欲不振/多汗症 等がある場合
五積散(ごしゃくさん)
頭痛/神経痛/冷え/腰痛/股関節痛/のぼせ 等がある場合

3)精神症状

精神症状

気分の落ち込み/意欲の低下/イライラ/情緒の不安定/不眠 など

よく用いられる漢方薬
加味逍遙散(かみしょうようさん)
ホットフラッシュ/情緒の不安定/各種の精神症状 等がある場合
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
便秘/精神症状 等がある場合
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
気分の落ち込み/のどの異物感/不眠症 等がある場合
茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう)
半夏厚朴湯に加えて腹部症状がある場合
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
疲れ/意欲の低下 等がある場合
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
疲れ/意欲の低下 等がある場合
十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
疲れ/乾燥肌 等がある場合
加味帰脾湯(かみきひとう)
疲れ/不眠 等がある場合
酸棗仁湯(さんそうにんとう)
不眠 等がある場合
抑肝散(よくかんさん)
イライラ 等がある場合
柴胡剤(さいこざい)
生薬・柴胡を含む処方(大柴胡湯/四逆散/柴胡加竜骨牡蠣湯/小柴胡湯/柴胡桂枝湯/柴胡桂枝乾姜湯/補中益気湯/抑肝散 など)

上記に挙げた薬の他にも、症状に合わせて多くの漢方薬を用います。

漢方的な考え方に基づいた更年期障害の治療

更年期障害に関して、私の治療法は、下記の1)と2)の治療法を組み合わせることを基本としています。また、漢方的な体質の診断を通じて、家庭での運動や食生活の改善などに対する提案をさせて頂くこともあります。

1)「血(けつ)」に関連した治療

産科婦人科に関連した漢方治療を考える際には、「血(けつ)」の考え方を理解することが重要です。漢方では、人体を「気(き)/血(けつ)/水(すい)」の3要素に分けて考えますが、この「気/血/水」が「スムーズに人体をめぐっている」のが健康な状態です。逆に、「気/血/水」の「めぐりが悪い」状態が病気であると言えます。

めぐりが悪い状態には二つあり、以下の区別があります。

  • ①「虚(きょ)」:量が無いから、めぐりが悪い
  • ②「実(じつ)」:量があっても流れが滞って、めぐりが悪い

人体の3要素「気/血/水」に、各々「虚」と「実」の病態があり、合計すると3×2で6種類の病態に分類できます。これが、漢方で考える病態分類の基本となります。

以上をまとめると、以下のような表になります。

  (量が無いから、めぐりが悪い) (流れが滞って、めぐりが悪い)
(き) 気虚(気虚) 気うつ
気逆(気の逆流)
(けつ) 血虚(けっきょ) お血(おけつ)
(すい) 陰虚の一部
日本漢方ではあまり重視されない
水毒(すいどく)

産科婦人科の領域でよく問題になる「お血」は、「血」の「流れが滞ってめぐりが悪い」状態です。治療には、「駆お血剤」と呼ばれる漢方薬/生薬を使います。

血虚は、「血」の「量がないから、めぐりが悪い」状態です。治療は、不足している「血」を「補う」タイプの漢方薬/生薬を使います。

漢方で考える「血」とは、何か?これは、なかなかに難しい問題です。古来、様々な学説がありますが、詳しく解説を始めると形而上学的な議論になりますので、ここではあまり深入りしません。

漢方的な病態の考え方では、治療と診断は表裏の関係にあります。ある治療で良くなれば、その治療の適応病態であったという診断が確定します。正直な話として、「駆お血剤」を使って治れば「お血」、「血を補って」治れば「血虚」、以上の理解で良いかと思っています。治療のために、便宜的に分類された概念だと考えています。

漢方薬の組み合わせ

実際の臨床の場で、更年期障害をどのように治療しているのか?
私の「がん漢方」の師匠であり、日本漢方の確立において中心となった流派・「古方派」の臨床医である星野先生の治療法を説明します。

基本的に、柴胡剤(生薬・柴胡を含む漢方薬のグループ)と「駆お血剤」を組み合わせる形で治療を考える場合が多いです。乳がんなどの治療でホルモン剤を使うと、更年期障害のような症状が起きる場合がありますが、この場合も以下の組み合わせを中心とした治療を行います。

◎更年期障害に対する漢方薬の組み合わせ(基本的には、柴胡剤/駆お血剤から各々1種類を選んで組み合わせる)

  柴胡剤 駆お血剤









大柴胡湯
四逆散
柴胡加竜骨牡蠣湯
小柴胡湯
柴胡桂枝湯
柴胡桂枝乾姜湯
補中益気湯

(+α加味逍遙散)
桃核承気湯


桂枝茯苓丸


当帰芍薬散


※表中の「強 ⇔ 弱」は、一般的に言われる薬効の強さ。

柴胡剤を用いる場合には、漢方的な腹部診察「腹診」を通じて処方を選ぶことが重要です。私も、柴胡剤の選択の際には腹部診察の所見を重視しています。具体的な治療に関しては、胸脇苦満(きょうきょうくまん、肋骨の下の部分の圧痛や抵抗感)/心下痞硬(しんかひこう、みぞおちの部分の圧痛や抵抗感)、上腹部の腹直筋の緊張などを診断して、処方選択の参考とします。

産科婦人科の領域でよく用いられる代表的な漢方薬に関して、使い分ける際のポイントを表にまとめます。

  当帰芍薬散 桂枝茯苓丸 桃核承気湯 加味逍遙散
症状 冷え症
むくみ
体力は弱め
お血に対して幅広い適応 精神症状
便秘
体力は強め
更年期障害
多愁訴
冷えのぼせ
身体所見 舌に歯形(歯圧痕)
腹部の振水音
舌下静脈怒張が強い
臍傍に圧痛あり
舌下静脈怒張が強い
臍傍に圧痛あり(特に左腸骨窩)
特徴的な所見に乏しい

漢方の診察では、漢方的な問診/視診/腹部診察/脈診などを行います。これらを通じて情報を得て、総合的に判断して適切な治療を組み立てることが重要です。

2)腎に関連した治療

漢方で考える「腎」は、人体の重要な機能単位で、人間の誕生/成長/生殖/老化などと非常に深い関係があるとされます。腎の機能は、誕生してから徐々にエネルギーが蓄積され、青年期に最も充実した状態となり、その後は徐々に衰えるという経過をたどります。

特に女性では、7の倍数の年齢を節目として移り変わるとされており、2000年ほど前に成立した古典には以下のような記述があります。

  7歳 歯が生えかわり、髪が長くなる。
14歳 月経がはじまる。子供を産めるようになる。
21歳 体が成熟する。背も伸び切る。
28歳 筋肉がしっかりする。髪も最も長くなる。身体が充実。
35歳 顔の色つやに陰りが出る。髪や頬のハリに衰えが出始める。
42歳 顔がやつれて、白髪が出始める。
49歳 肉体が衰える。閉経になる。

この年齢と体の変化の関係は現代でもあまり変わっていないとされ、更年期障害の治療を考える際には「腎」の機能にも注目しておく必要があります。

診察において漢方的な腹部所見として「小腹不仁」(しょうふくふじん、下腹部の筋肉の緊張の低下)等がみられた場合には、「腎」に対する治療も考えます。具体的には、六味丸/八味地黄丸/牛車腎気丸などを用い、衰えた「腎」の機能を高めることを目指します。
また、漢方的に「腎」の機能を弱めるとされる生活習慣を改めることをアドバイスしています。

更年期障害のまとめ

更年期障害は、閉経の前後5年ずつの合計10年の時期に起こる様々な症状によって日常生活に問題が生じたものです。原因として、ホルモンの低下や身体的/社会的/心理的な要素が複雑に絡み合っていると考えられています。治療としては薬物治療や非薬物治療が行われており、漢方薬も重要な役割を果たしています。

一歩進んだ頭痛治療、漢方にできること

漢方は、現代医学的な検査法や治療法が成立する以前に基礎が形作られた医学体系です。問診と身体診察を重視し、治療の反応をみながら柔軟に方針を組み立てていくところに特徴があります。また、必ずしも現代医学的な病名や血液や画像などによる検査での異常がなくても治療できる場合があります。更年期障害では、現代医学的に「不定愁訴」と片付けられてしまう症状で悩んでいる方も多くいらっしゃいます。現代医学的には重視されていない訴えが、漢方的には重要な意味を持つことが多くあります。

何かお困りのことがあれば、経験のある医療者のいる医療機関を受診してご相談ください。

【参考文献】
  • ・公益社団法人日本産科婦人科学会 更年期障害
  • ・矢數道明.臨床応用漢方處方解説.創元社.2001年増補改訂版題十一刷
  • ・総編集福井次矢・高木誠・小室一成.今日の治療指針2019年ポケット版.医学書院.
  • ・星野惠津夫.症例から学ぶがんの漢方サポート.南山堂.2015年第1刷
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