漢方診療の実際

 

 『漢方薬は、治療であると同時に、診断です。』

 漢方を習い始めたころ、松田先生に教わった言葉です。

 漢方で治療の対象となる病態・『証』は、様々な条件によって変化します。以前に有効であった治療法が無効になることもあります。その為、経時的に診断し、『証』の変化に応じて治療法も変更していかなければなりません。

 例えば、風邪をひいた時などは、従来の治療からその時の風邪の病態に合った治療に変更します。

 

 そのような関係を図で示すと、次のようになります。

 

 

 まず、漢方的な診断(望診・聞診・問診・切診)を通じて、治療方針を決定します。この時の治療方針は、診察を通じた病態の仮説で、まだ確定ではありません。

 治療(当院では、漢方薬の服薬)が、有効であれば、診断の確定(真の『証』の確定)となります。

 治療を必要十分な時間継続し、できれば漢方薬を徐々に減らして、薬なしでも調子が良い状態を目指します。

 

 治療が無効、または今まで有効であった治療の効果が思わしくなくなれば、再び診察に戻って診断をやり直し、治療方針を考えます。

 

 漢方は、このように状態に応じて診断と治療を検討し続けながら、より良い状態を目指していきます。