阪急神戸線「夙川駅」より徒歩約2分、西宮市羽衣町の「漢方内科・内科しずかクリニック」です。

がんの漢方治療

がんの漢方治療

がんによる体力の低下『癌証』と補剤

漢方における院長の専門である、がんの漢方治療の話です。

がんは、日本において昭和56年より死因の第1位となり、現在では、年間36万人以上の国民ががんで死亡しており、これは、3人に1人が“がん”によって亡くなっていることになります。
日本人にとって「国民病」といっても過言ではない状況となっています。(注1)

高齢化や生活習慣などの変化に伴い、日本をはじめ多くの国でがんは大きな問題となっています。中国で学んだ中医と日本のがん漢方を結び合わせて、社会のお役に立つことは、今まで教えていただいた師匠への恩返しでもあると感じています。
・・・なんて書くと大仰ですが、読みやすさ重視で書いていきますので、よろしければお付き合いください。

◎がん研有明病院とがん漢方

私は、東京のがん研有明病院の漢方サポート外来で、癌の漢方治療を学びました。がん研有明病院は、日本最高峰のがん治療の専門病院です。
がん研有明病院の設立母体は、公益財団法人がん研究会で、明治41年(1908年)に発足し、100年以上の歴史を持ちます。

日本で初のがん専門の研究所とその附属病院として開設されたのは昭和9年(1934年)、それ以降、戦災なども乗り越えて歴史を刻んでいます。(注2)
2006年4月、がん研有明病院の総合内科エリアに『漢方サポート外来』が開設されました。様々な症状に苦しむ患者さんに対して、症状の緩和を図り、元気を回復させ、QOLを高め、がん治療が計画通り行えるようにサポートし、更にその過程で漢方薬の抗腫瘍効果を検討することも目標にしています。2500人以上のがん患者さんを実際に診察し、実際に漢方治療を行いました。

私は、中国の上海中医薬大学の大学院に留学した後に、がん研有明病院の漢方サポート外来で開設者である星野惠津夫先生のもとで、がんの漢方治療を学びました。
この項目は、星野先生のご著書を基に、私自身の意見を交えつつまとめたものです。

【参考サイト】

がん漢方『癌証』とは?

『癌証』は、がん漢方を理解する上で重要な概念

がんの患者さんは、

  • がん自体(浸潤/転移/サイトカインの分泌)
  • がんの治療(手術/放射線療法/抗がん剤/ホルモン治療など)

によって、様々な症状が出てきます。その結果、気力と体力が低下した状態となってしまいます。
この状態を、星野先生は『癌証』と名付けました。
図にすると、以下のようになります。

癌証

元の表は、上から下に一方通行で落ちていくイメージです。
私は、『様々な症状』と『気力/体力の低下』が相互に影響しあって、負のスパイラルで更に悪化していくと考えていますので、図を少し変更しています。

独楽をイメージして頂くと、イメージがつかみやすいかもしれません。
独楽は、十分に回転のエネルギーがあるうちは、少々の障害は跳ね飛ばして回り続けます。しかし、大きな障害にぶつかったりエネルギーを消耗したりして回転のエネルギーが弱ってくると、少しの障害でもグラグラになり、回転が更に不安定になって、最終的には倒れてしまいます。
そんなイメージです。

人体も、十分にエネルギーがある間は、少々のダメージではへこたれません。しかし、様々な要因でエネルギーが弱ってくると、症状が更にこたえるようになり、ますますエネルギーが減っていく。そんな負のスパイラルにはまり込むと、どんどんと気力や体力を消耗してしまいます。

では、負のスパイラルを断ち切って、気力体力を回復させるには、どうすればよいのか?
そこで重要となるのが、気力や体力を回復させる『補剤』による治療です。

この項目は、私のがん漢方の師匠である星野惠津夫先生の著書『症例から学ぶがんの漢方サポート』などを参考にして制作しました。

『癌証』の治療薬、『補剤』とその用法

がん自体の進行やがんの治療に関係して、体力や気力が弱った状態となる『癌証』です。その治療に使われる漢方薬が、『補剤』と呼ばれるグループの処方です。
補剤をより詳しく理解するため、少し漢方治療の基本について話をします。

漢方では、人体の恒常性を維持し発展させる要素を『正気(せいき)』と呼びます。
その逆に、人体の恒常性を破壊し悪化させる要素を『邪気(じゃき)』と呼びます。
人体にとって必要な『正気』が『不足した』状態が、『虚(きょ)』です。
これに対する治療が『補(ほ)』であり、人体に必要な要素を補います。
人体にとって有害な『邪気』が『過剰な』状態が、『実(じつ)』です。
これに対する治療が『瀉(しゃ)』で、人体に有害な要素を取り除きます。

漢方治療の基本

漢方の治療の原則『扶正去邪』

漢方治療の原則は、『扶正(ふせい、必要な要素が足りなければ補う)』『去邪(きょじゃ、不要な要素が過剰ならば捨て去る)』ことです。この二つによって、人体をあるべきバランスに戻し、より良い状態に導きます

その意味では、現代医学的に手術でがんを切除したり抗がん剤でがんを治療したりするのは、非常に強力な『瀉』であると言えそうです。

そして、『扶正』で用いる中心的な漢方薬が、『補剤』です。その中でも、がん漢方で主に用いる主要な補剤は、3大補剤と呼ばれる漢方薬です。具体的には、①補中益気湯、②十全大補湯、③人参養栄湯、以上を状態に応じて段階的に使い分けます。また、3大補剤でも力が及ばない時には、四逆湯類(四逆湯とその類縁処方)を用います。

『人体に有用な要素が足りない』ことが、『虚』です。そして、『虚』の治療に際して、『人体に必要な要素の中で、何が足りないのか?』を考えることが、非常に大切です。それをどのように診断し、どの補剤を用いるか?それが、がん漢方における補剤の使用方法の中核です。

以降、3大補剤を中心に、具体的な診断と治療について話を進めていきます。

3大補剤と人体の3大要素『気/血/水』

がんで気力や体力が弱るのが、『癌証』です。『癌証』の治療に使われるのが、『補剤』です。漢方では、人体を3大要素『気/血/水』に分類して考えます。補剤の使用に際しては、どの要素が不足しているかを考えるのが重要です。

代表的な補剤、『三大補剤』に関して説明すれば、

  • 補中益気湯主に『脾』を元気にし、『気』を補う
  • 十全大補湯主に『脾』を元気にし、『気』と『血』を補う
  • 人参養栄湯主に『脾』と『肺』を元気にし、『気』と『血』を補う

と分類できます。
以下、各々の処方について、詳しく説明します。

『気虚』とその治療

漢方では、人体を『気/血(けつ)/水(すい)』の3大要素に分けて分析し、診断と治療を行います。
ここでは、癌証における『気/血/水』の各要素の不足の診断と、それに対する補剤を用いた治療について話をします。
『気虚(ききょ)』は、人体の3大要素である『気』が『虚(不足)』した状態です。
治療は、『気』を『補う』ことが中心です。

まずは、『気虚』の診断に関して、中医のスコア表をご覧ください。

◎気虚タイプ スコア表(中華中医薬学会制定)

  ない 少し 時々 いつも 非常に
疲れやすい 1 2 3 4 5
息切れしやすい 1 2 3 4 5
動悸が多い
落ち着かない感じ
1 2 3 4 5
めまい・立ちくらみが多い 1 2 3 4 5
風邪をひきやすい 1 2 3 4 5
静かなのが好き
喋るのがおっくう
1 2 3 4 5
声が小さい
声に力がない
1 2 3 4 5
風邪をひきやすい 1 2 3 4 5

気虚スコア

  • ≧21点:気虚タイプ
  • 20〜18点:傾向あり
  • ≦17点:違う

次に、日本でよく使われる、寺澤先生のスコア表を示します。

◎気虚の診断基準(日本、寺澤スコア)

症状/程度 とても 少し なし
体がだるい 10 5 0
気力がない 10 5 0
疲れやすい 10 5 0
日中の眠気 6 3 0
食欲不振 4 2 0
風邪をひきやすい 8 4 0
物事に驚きやすい 4 2 0
眼光・音声に力がない 6 3 0
舌が淡白紅・腫大 8 4 0
脈が弱い 8 4 0
服力が軟弱 8 4 0
内臓のアトニー症状
(胃下垂、腎加水、子宮脱、脱肛など)
10 5 0
小腹不仁 6 3 0
下痢傾向 4 2 0

総計30点以上を気虚とする。顕著に認められるものに該当するスコアを全点与え、程度の軽いものには各々の1/2を与える。 (寺澤捷年.症例から学ぶ和漢診療学第2版.医学書院.2003年第2版.17 表作成は院長)

いかがでしょうか?気虚のイメージがわいてきましたか?

では、『気虚(気が足りない)』に対し、『気を補う』ためには、具体的にどうすればよいのでしょうか?

『気』を増やすために、まず、『気』を知りましょう!
実は、この『気』の理解がかなりの曲者です。あまり詳しく話を始めると、世界の根本原理を論じる形而上学的な話になりかねず、なかなか治療までいきつきません。

とにかく、イメージしやすく。そして臨床でも役に立つために・・・
あえて言おう、『気はエンジンであると!』

工学のド素人である院長がイメージするエンジン関係は、こんなイメージです。

エンジンのイメージ

上の図に倣って、気の流れを考えると、次のようになります。

気のイメージ

漢方の考え方では、人体の気には2種類あるとされます。

先天の気
生まれ持ったエネルギーで、腎に蓄えられる。後天の気と相互関係にあり、生まれてからのエネルギーも蓄え、またエネルギーの生成にも関わります。バッテリーのイメージです。
後天の気
生まれてから生成されるエネルギーで、特に『脾』と『肺』の機能が大きく関与します。先天の気と相互関係にあり、『脾』や『肺』は、漢方で考える機能単位です。詳しく説明すると、以下の様になります。

漢方で考える『五臓』は、『肝/心/脾/肺/腎』の5つを指し、これらは人体における機能の単位となっています。江戸時代、当時の西洋医学の解剖学が日本に伝来した際、漢方の単語を使って翻訳し、西洋医学的な解剖学で用いる単語と漢方の概念がゴチャゴチャになってしまいました。
漢方的な意味で単語を使うときに『』をつけているのは、概念の混乱をできるだけ避けようとする意図からです。

  • 消化や吸収などの機能を『脾』と呼びます。大地の恵みである食べ物などを、消化/吸収します。これは、ある意味で、大地のエネルギーを取り入れ取り込む機能であると考えられます。
  • 呼吸などに関連した機能を『肺』と呼びます。ある意味で、天の気を受け入れ取り込む機能であると考えられます。

気の源は、食べ物などを通じて取り入れる『地の気』呼吸などを通じて取り入れる『天の気』です。
多少強引にまとめると、生まれてからのエネルギーの源は、『うまい食事』と『きれいな空気』であると言えます。これは、『天』と『地』のエネルギーを『人』に取り入れる過程であるともいえます。

いささか大げさな話になりましたが、以上の説明をもとに考えれば、『気』を増やすには、どうするか?がおのずと明らかになります。

『脾』と『肺』の機能を高め、そして『腎』を元気にすれば『気』が増える!!

3大補剤、補中益気湯

補中益気湯は、『気虚』の代表的な治療方剤です。
補中益気湯とか、薬の名前がややこしいのが漢方の泣き所ですが、大丈夫です!一発で覚える方法があります!

『補中益気湯』、この名前が、何で書かれているか?もちろん、漢字で書かれています。漢字で書かれている、このことが重要です。つまり、名前の読み方を知っているかどうか、それがキモの部分です。とっつきにくいと感じる人もいる感じですが、漢字であることこそが、強みになるのです!

まず、“中”は、“おなか”です!

・・・よけいに、分かりにくい??
人体を上/中/下に分ければ、真ん中あたりに腹部が来ます。

『腹部』は、『おなか』!こう覚えておけば、忘れません。

補中益気湯、この名前を分解すれば、

  • 『補』『おぎなう』。不足している要素を補うことです。
  • 『中』『おなか』。腹部です。消化吸収の能力を含みます。
  • 『益』『益す』。 文字通り、増やすこと、マシマシです。
  • 『気』『生命エネルギー』
  • 『湯』『スープ』。中国語では、お湯ではなくてスープのことです。

これらを合わせれば、
『お腹を補い、生命エネルギーを増すスープ』
つまり、『お腹すっきり、元気マシマシのスープ』!!

補中益気湯

お腹の調子が悪く、消化吸収の力が弱くて(『脾』の機能が弱く)、弱々しい(生命エネルギー=気が弱い)。そんな方にピッタリのスープであることが分かります!
名前を見れば、どんな人におススメの漢方薬か、一目瞭然!
『そのまま、やんけ!』思わず、そんなツッコミをしたくなる!?

しかめっ面をして形而上学的な論争に浸っていれば、それだけで漢方が上手になるわけではありません!
コツさえ分かってしまえば、漢方がどんどん整理でき、臨床にも活用の幅が広がると感じています。

『気虚+血虚』の中心処方、十全大補湯+人参養栄湯

次に、残りの補剤、『十全大補湯』『人参養栄湯』を理解するうえで不可欠の『血虚』について説明します。

先の項目で、『気虚』(人体の3大要素のひとつ『気』の不足)とその代表的な治療薬である補中益気湯が出てきました。残りの二つ、『十全大補湯』『人参養栄湯』は、『気虚』に加えて『血虚』があることが共通の目標です。
人体の三大要素は、『気/血(けつ)/水(すい)』です。補剤の理解のため、まず、『血(けつ)』の不足である『血虚』を説明します。

はじめに、『血虚』の診断スコアをご覧ください。
 気虚の項目で用いたのは、中医学で用いるスコア表の一種ですが、ここでは日本でよく用いられる寺澤スコアを例示します。寺澤スコアでは、腹部の診察による項目が含まれていますが、配点は高くないので問診部分のみでもかなり有用であると思います。

◎血虚の診断基準(寺澤スコア)

  非常に 軽い なし
集中力低下 6 3 0
不眠、睡眠障害 6 3 0
眼精疲労 12 6 0
めまい感 8 4 0
こむらがえり 10 5 0
過少月経・月経不順 6 3 0
顔色不良 10 5 0
頭髪が抜けやすい(注1) 8 4 0
皮膚の乾燥と荒れ、赤ぎれ 14 7 0
爪の異常(注2) 8 4 0
知覚障害(注3) 6 3 0
腹直筋攣急 6 3 0

いずれも顕著に認められるものに当該のスコアを与え、程度の軽いものには各々の1/2を与える。総計30点以上を血虚とする。

  • (注1)頭部のフケが多いのも同等とする
  • (注2)爪がもろい、爪がひび割れる、爪床部の皮膚が荒れてササクレるなどの症状
  • (注3)ピリピリ、ズーズー等のしびれ感、ひと皮かぶった感じ、知覚低下など

(寺澤捷年.症例から学ぶ和漢診療学第2版.医学書院.2003年第2版.40、表作成院長)

皮膚の乾燥に大きな点数が割り振られていますが、これはがんが進行した患者さんではよくみられる状態です。潤いとつやのない独特の状態ですので、そのつもりで診察をしていれば、診断できると思います。この肌の状態は、『気虚』と『気虚+血虚』を見分ける際にも重要な所見となります。

参考までに、中医におけるスコア表も挙げておきます。中医学における9種類の体質スコアは問診項目のみで診断できるために使いやすいのですが、血虚のスコア表がありません。

人体の3大要素『気/血/水』の中では、『陽』である気に対して『陰』の要素とされる『血/水(津液)』要素の不足に関したスコアで、中医学では『陰虚』と呼ばれる病態です。
中医では、人体を陰と陽に分けて分類しますが、陰には体を潤す作用が含まれます。陰(うるおい)が虚(足りない)、つまり、相対的に人体の体液成分の不足、乾燥気味の体質です。日本語的には、『カサカサ型』というのが、イメージしやすいかもしれません。肌が乾燥しやすい方、水分をよく摂る方、カサカサ型かもしれません。特に、女性に多い体質です。
参考のために、挙げておきます。

◎カサカサ型(陰虚)スコア表(中華中医薬学会制定)

  ない 少し 時々 いつも 非常に
掌・足の裏がほてる 1 2 3 4 5
体や頭部の熱感 1 2 3 4 5
皮膚や唇の乾燥 1 2 3 4 5
口唇が他人より紅い 1 2 3 4 5
便秘し易い、便が乾燥 1 2 3 4 5
両頬が紅い 1 2 3 4 5
目が乾燥する 1 2 3 4 5
口が乾燥する、いつも水を飲みたい 1 2 3 4 5

陰虚スコア

  • ≧21点:陰虚体質
  • 20〜18点:傾向あり
  • <17点:違う

三大補剤、十全大補湯

気虚+血虚の治療で基本となる漢方薬が、十全大補湯です。
気虚の治療で基本となる漢方薬『四君子湯』と、血虚の治療で基本となる漢方薬『四物湯』、四君子湯+四物湯+αという十種類の生薬の組み合わせを骨格とした形で構成されています(製薬会社によって、エキス製剤に違いがあります)。補中益気湯の例に倣って、名前の漢字から効能を考えます。

  • 『十全』:「少しも欠けたところがないこと。十分に整っていて、危なげのないこと。また、そのさま。万全。」。
  • 『大』:「大いに」「ものすごく」。「絶対」という意味も。
  • 『補」:「補う」。「虚(足りない)」ものを「補う」の漢方薬を指す。
  • 『湯』:スープ。

つまり、「10種類の生薬配合!完璧!めちゃくちゃ補うスープ」ということ。
気虚+血虚の治療において基本となる漢方薬で、がんの治療にもよく用いられます。まさに、「十全(=完璧)」の名に恥じぬ名処方と言えます。

十全大補湯

3大補剤、人参養栄湯

この漢方薬は、十全大補湯との共通点が多い処方で、兄弟関係の処方ともいえます。
気虚+血虚を治療する処方の一つで、十全大補湯+呼吸系(息切れ、咳、痰など)の症状を目標に使用します。
処方の名前から効能を考えれば、以下のようになります。

  • 『人参』:朝鮮人参を含みます。弱った体を立て直す代表的な生薬です。
  • 『養』:養うことを意味します。
  • 『栄』:人体を流れる気の一種『栄気』を指すとされます。これは、『血』とも関係が深いものです。
  • 『湯』:スープのこと。

つまり、『朝鮮人参入り!血と関係したエネルギーを養う、栄養たっぷりスープ』というような意味になります。

人参養栄湯

3大補剤以外の補剤

四逆湯類

3大補剤でも上手くいかない場合

3大補剤を使ってもまだまだ症状が取れない場合、次の一手として四逆湯類(四逆湯とその類縁処方)を用います。四逆湯類を用いる際には、強い冷えや全身倦怠感を目標にします。漢方では、『四逆』とは手足の冷えのことを意味します。

残念ながら、四逆湯類はエキス製剤で医療保険に収載されていませんので、煎じ薬で処方することになります。使用に際して、生薬・附子の調整が重要ですが、詳しい医師にご相談ください。

◎四逆湯類の構成

四逆湯 カンゾウ3、カンキョウ3g、炮ブシ3g
通脈四逆湯 カンゾウ3、カンキョウ6g、炮ブシ3g
四逆加人参湯 カンゾウ3、カンキョウ3g、炮ブシ3gニンジン3g
茯苓四逆湯 カンゾウ3、カンキョウ3g、炮ブシ3g、ニンジン3g、ブクリョウ4g

この中では、茯苓四逆湯をよく使います。
附子の分量は、症状に合わせて調整します。

冷えの評価に関して、中医のスコア表で『陽虚』に関するものがあります。参考のため、下にあげておきます。冷えが主な症状ですので、『ヒエヒエ型』と言うとイメージしやすいかもしれません。

◎ヒエヒエ型(陽虚)スコア表(中華中医薬学会制定)

  ない 少し 時々 いつも 非常に
手足が冷たい 1 2 3 4 5
胃・背中・膝・腰が冷えやすい 1 2 3 4 5
冷えを感じ易く、他人より衣服が多い 1 2 3 4 5
周囲の人より寒さに敏感 1 2 3 4 5
風邪をひきやすい 1 2 3 4 5
冷たい食べ物が嫌い
冷たい食物で調子が悪くなる
1 2 3 4 5
冷たい物を食べると下痢しやすい 1 2 3 4 5

スコア合計

  • ≧18点:ヒエヒエ型(陽虚)
  • 17、18点:傾向あり
  • ≦15点:違う

癌証と補剤、まとめ

癌証
がんの患者さんは、①がん自体(浸潤/転移/サイトカインの分泌)②がんの治療(手術/放射線療法/抗がん剤/ホルモン治療など)によって、様々な症状が出る。その結果、気力と体力が低下した状態を『癌証』と呼ぶ。
癌証と補剤
癌証に対し、3大補剤(補中益気湯/十全大補湯/人参養栄湯)や四逆湯類(四逆湯とその類縁処方)による治療を行う。補中益気湯は主に気虚の治療薬であり、十全大補湯と人参養栄湯は『気虚+血虚』の治療薬である。

3大補剤の治療でも効果が思わしくない場合、四逆湯類の使用を検討する。
がんの漢方治療の他の要素は、また機を改めてお届けします。

がんに対する漢方治療の組み立て
【参考文献】
  • ・星野惠津夫.症例から学ぶがんの漢方サポート.南山堂.2015年
  • ・李其忠.人分九种吃不同.中国轻工业出版社.2012年
  • ・星野惠津夫.がんに効く最強の統合医療.株式会社マキノ出版.2017年
  • ・星野惠津夫.漢方で癌治療はもっと楽になる.講談社.2015年
  • ・李其忠.中医基础理论纵横解析 人民卫生出版社。2007年第2版

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