阪急神戸線「夙川駅」より徒歩約2分、西宮市羽衣町の「漢方内科・内科しずかクリニック」です。

加齢と漢方

漢方的な抗加齢とがん漢方

はじめに

漢方では、人体を『気/血(けつ)/水(すい)』の要素に分類して病態を整理すると理解しやすいのですが、その中でも特に『気』を重視します。その為、漢方は、『気の医学』とも言われます。『気』は漢方と加齢や癌の漢方治療を考えるうえで非常に重要な要素ですので、まずは気について話をします。

そもそも、『気』とは何か?これが非常に厄介な問題です。中国の哲学にも関連した問題であり、深く立ち入ると話が前に進みません。ここでは、私の漢方の師匠の一人であり日本東洋医学会の会長でもある佐藤弘先生の分類を述べるにとどめます。
東洋医学で扱われる『気』は、主に3つの意味に分けることができます。①生命エネルギー:元気など、②気体:空気など、③感情:気持ちなど。『気』という言葉を用いる時、どの意味で使われているかを意識していただけば、整理しやすいかと思います。

さて、人体を流れている『気』は、大きく2種類に分類することができます。①先天の気:生まれ持ったエネルギー、②後天の気:生まれてから取り入れたエネルギーの2種類です。先天の気は、漢方で考える機能単位である『腎』に蓄えられます。また、後天の気は、脾胃の作用(主に消化吸収など)と肺の作用(主に呼吸など)によって取り入れられます。先天の気と後天の気は、お互いに影響を与え合いながら、人体の恒常性を維持するために重要な働きをしています。

漢方と『気』

漢方と『気』

私個人としては、エンジンとバッテリーをイメージしていただけば、雰囲気をつかみやすいと思っています。

エンジンのイメージ

工学のド素人である院長のイメージですが、上のイメージを『気』の代謝に当てはめれば、以下の様になります。

気のイメージ

つまり、人体の気=バッテリー(先天の気)+エンジン(後天の気)となります。それなら、気を増やすためには、エンジン(主に脾と肺)とバッテリー(主に腎)の調子を良くすれば良いという流れになります。日本漢方でよく用いられるのは、脾(消化吸収)の調子を良くして体を元気にするという方法です。日本では、医療保険に収載されている漢方薬の中で、『肺』の機能をカバーする薬はあまり多くありません。具体的な処方に関しては、がんと補剤の項目で代表的な処方を説明していますので、宜しければご覧ください。

エンジンの重要部品である脾とバッテリーである腎、どちらが重要であるかという問題に関して、古来より多くの議論があります。私としては、『脾と腎はどちらも重要であり、診察して問題があると判断した方を先に治療する、または同時に治療する』、以上のように考えています。

腎の作用と治療

『気』の全体像をご理解いただいたうえで、ここでは主に腎について話を進めていきます。

『腎』は、漢方で考える人体の重要な機能単位である『五臓(肝/心/脾/肺/腎)』のひとつです。『腎』は、人体の誕生/成長/生殖/加齢に大きく関わる作用であり、『腎の気』が尽きれば生命も尽きるとされます。バッテリーがあがってしまうと、エンジンがかからず車が動かないようなイメージです。加齢には、腎の衰えが大きく関わり、成人後には徐々に衰えます。このあたり、バッテリーの経年劣化のイメージです。

『腎』の衰えは、『腎虚』と言われます。中医学では、『腎』の機能は『腎陽』と『腎陰』に分類されます。以下に、各々の症状を述べますので、大まかなイメージをつかんでください。

◎腎陰虚と腎陽虚

  腎陰 腎陽虚
症状 腰痛、膝痛、めまい、喉の渇き、耳鳴、不眠、など 足腰の衰え、寒がり、元気がない、血色が悪い、慢性下痢 など
男子 夢精など インポテンツなど
女子 経少閉経や崩漏、やせる、寝汗、ほてりかわき 不妊など
特徴 全身症状+乾燥/ほてり 全身症状+冷え
治療薬 六味丸
左帰丸
八味地黄丸、牛車腎気丸
右帰丸

人の衰えは、女性では7の倍数の年齢、男性では8の倍数の年齢が曲がり角になると言われています。2000年近く前に成立したとされる書物で、既にそのことが指摘されています。このような例をみると、人間は昔から本質的に変わっていないのだと感じさせられますね。

加齢と漢方(女性)
加齢と漢方(男性)

診察上での腎虚の所見を説明します。
腎虚では、下腹部に症状を認めることが多くあります。
下腹部が軟弱無力で押すと容易にへこむ所見を、小腹不仁とよびます。
逆に、下腹部で腹直筋が過度に緊張している場合もあります。(臍下拘急
また、下腹部の皮下に索状物(解剖学的には白線)を触れることがあります。(正中芯

腎虚の身体所見

腎虚の治療薬・補腎剤

『腎虚』の具体的な治療薬の説明をします。
『腎』の『衰え(虚)』を治療する漢方薬は、補腎剤(腎の衰えを補う薬剤)』と呼ばれるグループとしてまとめることができます。日本では、六味地黄丸/八味地黄丸/牛車腎気丸を使用することが多いので、基本となる八味地黄丸を中心に説明します。

補腎剤 ~八味地黄丸(八味腎気丸)~

  • 『八味』は、「8種類の生薬」をさす。
  • 『腎』は、漢方で考える機能単位のこと。漢方の「腎」は西洋医学的の「kidney」とは全く異なり、誤解を恐れつつあえて言い切れば、漢方の「腎」は「生命エネルギーのバッテリー」のこと。成長に伴ってチャージされ、老化に従って残量が減る。バッテリーの残量が空になれば、死亡。人体の生命活動に深くかかわる非常に重要な要素。
  • 『気』は、「生命エネルギー」。特に「腎」の「気」は、成長や老化・生殖など命の根源に大きく関連したエネルギー
  • 『丸』は、「丸薬」。本来は、生薬を砕いて粉末にし、蜂蜜で練る。

つまり、『8種類の生薬配合!生命エネルギーのバッテリーをチャージする丸薬』。腰痛や膝痛、他には生殖機能に関係した症状など、加齢に関わる諸症状に対して広い適応を持つことも納得です!

補腎剤 ~牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)~

  • 『牛』は、「牛膝(ごしつ)」。生薬の一種。
  • 『車』は、「車前子(しゃぜんし)」。生薬の一種。
  • 『腎気丸』は、「腎(生命エネルギーのバッテリー)」+「気(エネルギー)」+「丸(丸薬タイプの処方)」。これは八味地黄丸(八味腎気丸)の場合と同じ。

これらを合わせて、『牛膝と車前子を加えて、更にパワーアップ!生命エネルギーの急速チャージに効く丸薬!』です。牛車腎気丸は、八味地黄丸に「牛膝」と「車前子」が加わったものです。二つの生薬が新たに加わり、八味地黄丸の効果を更に強めた構成になっています。

補腎剤 ~六味地黄丸~

八味地黄丸と六味地黄丸は、腎陽虚の基本的な治療薬です。これに対して、六味地黄丸は腎陰虚の基本的な治療薬です。

八味地黄丸から生薬を2種類除くと、六味地黄丸になります。除かれた生薬は温める力が強いので、冷えなどの症状があれば八味地黄丸を用いる場合が多いです。

がんの漢方治療と補腎剤

私のがん漢方の師匠は、星野惠津夫先生です。星野先生は、がん治療のメッカ・東京のがん研有明病院で漢方サポート外来を設立し、2500人以上のがん患者さんに対して漢方治療を行い、がん漢方の基礎となる組み立てを提唱されました。その組み合世話を図で示します。

この治療は、がんや癌の治療で気力や体力が弱った状態である『癌証』を治療するためのもので、腎の衰えをカバーする補腎剤は赤い枠②の部分で使用されています。補腎剤は、癌証治療でも重要な地位を占めています。

がん患者さんに漢方的な診察をした場合には、下腹部の筋肉の緊張の弱さがみられる場合が多くみられます。これは、漢方医学的に『小腹不仁(しょうふくふじん)』と呼ばれる所見で、『腎虚(腎の衰え)』を示す重要なサインです。また、がん患者さんを詳しく問診すれば、頑固な冷えがみられる場合が多く、これは『腎陽虚』の表れとして漢方的な治療の対象と考えることができます。補腎剤としては牛車腎気丸を使う場合が多く、六味丸(腎陰虚の代表的な治療薬)はあまり用いられません。

がん漢方では、①補剤+②補腎剤を中心として③駆お血剤を少量プラスする形での処方構成になる場合が多くあります。実際の加療に際しては、熟達した医師にご相談ください。

癌証に対する漢方治療の組み立て
【参考文献】
  • 1:星野惠津夫.症例から学ぶがんの漢方サポート.南山堂.2015年
  • 2:李其忠.人分九种吃不同.中国轻工业出版社.2012年
  • 3:星野惠津夫.漢方で癌治療はもっと楽になる.講談社.2015年
  • 4:李其忠.中医基础理论纵横解析 人民卫生出版社。2007年第2版
  • 5:中医診断学日本留学生専科教材.上海中医薬大学中国伝統医学教育センター
  • 6:方剤学日本留学生専科教材.上海中医薬大学中国伝統医学教育センター

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