漢方と世界の伝統医学
漢方と世界の伝統医学
いきなりですが、質問です。
- 漢方の本場は、どこ??
- ①もちろん、中国
- ②実は、韓国
- ③ホントは、日本
- ④歴史的には、インド
世界3大伝統医学
世界の伝統医学の歴史に大きな影響を与えた3つの体系があり、一般に3大伝統医学と呼ばれます。
①ユナニ系の医学
- イスラム系の伝統医学
- 現代医学は、歴史的にユナニの系統。西洋では、『古代ギリシアを起源とする医学がイスラム圏に伝わり、それがヨーロッパに逆輸入する形で現代に伝わった』との論調があります。
②アーユルヴェーダ系の医学
- インド系の伝統医学
③中国系の医学
- 中国系の伝統医学をもとにした系統
-
- ・現代中国では、整理されて『中医』と呼ばれる系統が、高等教育として行われています。大学は、5年間の本科、3年間の修士課程、3年間の博士課程に整備されています。
- ・日本では、江戸時代の医学革命を経て、独自の医学体系となっています。
- ・韓国では、『韓医学』や『韓方』と呼ばれることがあります。
正直、ここから先の詳しい話になると、各々の医学体系が各々の優位性と由緒ある歴史を主張しており、深入りするとかえって混乱をまねていてしまいます。
例えば、中国/日本/韓国の間で、国際標準化の主導権争いがあります。
更に、『世界4大伝統医学』と言う際には、上記の3大医学に加えて自国の伝統医学が入ることがあります。『日本で世界4大美人と言えば、日本人の小野小町が入っているようなもの』と言えば、イメージしやすいかもしれません。
また、西洋で東洋医学と言えば、インド型と中国型を指すことがありますが、日本で東洋医学と言えば中国系のことが多いです。
この辺りは、詳しく説明しようとするとかえって混乱しやすくなりますので、軽く触れる程度に留めさせていただきます。
漢方と現代医療 ~統合医療を中心に~
前項では、伝統医学の中で漢方の位置づけをお話ししました。
では、現代医学の中で、漢方の位置づけはどうなっているのでしょうか?
漢方は、『統合医療』の中に位置づけられることが多いです。
では、統合医療とは、何か?
これについて、厚生労働省のHP(注1)を基にして、解説を交えつつ引用します。
いわゆる『統合医療』は、以下のようにまとめられます。
『統合医療』
- ・近代西洋医学と相補(補完)・代替療法や伝統医学等とを組み合わせて行う療法であり、多種多様なものが存在します。
- ・社団法人日本統合医療学会によると、「統合医療とは、さまざまな医療を融合し患者中心の医療を行うものです。科学的な近代西洋医学のみならず、伝統医学と相補(補完)・代替医療、更に経験的な伝統・民族医学や民間療法なども広く検討しています。
統合医療の分野で先進的なのは、アメリカです。
アメリカでは、『国立補完統合衛生センター』(略称: NCCIH、National Center for Complementary and Integrative Health)が設立され、多額の国費を投じて研究がおこなわれています。
国立補完統合衛生センターにおける定義をお示しします。
国立保管統合衛生センター
- ・統合医療
従来の医学と、安全性と有効性について質の高いエビデンスが得られている相補(補完)・代替療法とを統合した療法 - ・相補(補完)・代替療法
一般的に従来の通常医療と見なされていない、さまざまな医学・ヘルスケアシステム、施術、生成物質など
さらに、相補(補完)・代替療法は、以下のように分類されます。
- ①天然物(Natural Products)
ハーブ(ボタニカル)、ビタミン・ミネラル、プロバイオティクスなど - ②心身療法(Mind and Body Practices)
ヨガ、カイロプラクティック、整骨療法、瞑想、マッサージ療法、鍼灸、リラクゼーション、太極拳、気功、ヒーリングタッチ、催眠療法、運動療法など - ③そのほかの補完療法(Other Complementary Health Approaches)
心霊治療家、アーユルヴェーダ医学、伝統的中国医学、 ホメオパシー、自然療法など
分類の中に漢方の文字がありませんが、漢方は、歴史的に伝統的中医学の枝のひとつであり、中国から断続的に伝来した医学体系が、特に江戸時代に日本化された形です。
現代の日本においては、統合医療は、以下のような位置づけです。
統合医療
近代西洋医学を前提として、これに相補 (補完)・代替療法や伝統医学等を組み合わせて更にQOL(Quality of Life:生活の質) を向上させる医療であり、医師主導で行うものであって、場合により多職種が協働して行うもの
また、漢方に関して、以下のような言及があります。
- 【「漢方医学」に関する補足説明 】
-
- ※現在、大学での医学教育として、漢方薬に関する教育が実施されています。
- ※日本医学会の分科会として、日本内科学会などと同じく、日本東洋医学会があり、専門医制度が設置されています。
私は、日本統合医療学会の和歌山支部の支部長です。
漢方に関して、今の時代、世界に対しどの様に主張していくかが、ますます重要になっていると感じています。
院長の漢方の流派
漢方や中医学は、その歴史の中でいろいろな流派が生まれています。
院長の漢方・中医学の流派を整理してみました。
漢方に関して
私が初めに漢方を習ったのは、東京女子医大附属の東洋医学研究所クリニックです。
ここで、漢方界の巨匠・大塚敬節先生の系統の漢方を学びました。
現・日本東洋医学会会長の佐藤先生と、現・東海大学医学部漢方教室の新井真先生にご教授いただきました。
また幸いに大塚敬節先生の最後の直弟子である松田邦夫先生にもご指導いただく機会を得ました。
中国の大学に留学し、帰国後は、東京のがん研有明病院で漢方サポート外来を創立した星野惠津夫先生に、癌の漢方治療と古方派を教えていただきました。古方派は、日本漢方が成立するうえで中心的な役割を果たした流派です。
それから、大阪医科大学の健康科学クリニックで、後山尚久先生のご指導のもとで日本東洋医学会の漢方専門医を取得しました。
中医学に関して
中国の上海中医薬大学の大学院に留学しました際には、李其忠導師(直接の指導教授を中国では導師と呼びます)に臨床と論文のご指導を頂きました。
李導師は、中医基礎理論を創設した張老師の直弟子で、養生学でも有名な教授です。また、傷寒論・温病にも通じておられます。
また、中国では、白暁茹老師にもご指導をいただきました。白老師は、清王朝の御医(皇帝や貴人の治療にあたった宮廷医師)のご家系で、御医であった祖父から指導を受けた方です。
以上の流れを図にまとめると、以下のようになります。
院長の流派
漢方医学としては、漢方の確立に大きな影響を与えた『古方派』と、現代漢方に足跡を残した大塚先生の系統を中心に学びました。
中医学としては、現代中医学の基礎となった中医基礎理論を中心として養生学や伝統的な治療などを学びました。
診療スタイルとしては、漢方的に診察をして治療方針を立て、病態を中医学的に分析することが多いと感じています。
コロナと中医・漢方
本稿の目的
以下の内容を整理し、皆様に役立つ情報を発信する。
現時点では、コロナウイルス感染症と中医に関して、以下のようなことが言われている。
- コロナウイルス感染症は、中医では『疫』と位置付けられ、『湿熱』の病態として治療されることが多い。
- 中医治療はコロナウイルス感染症の重症化の予防、罹病機関の短縮に効果があるとされている。
これは、『温病』という治療理論の影響を強く受けている。
これに関して、ガイドラインが発表されている。
コロナウイする感染症を、病前/病中/病後に分け、各々の段階における対策や治療をまとめる。
病 前
コロナウイルス感染の予防を目指す。現代医学・中医の知見をまとめる。
- 現代の科学的な研究の結果をまとめ、コロナを含む風邪の予防に役立つ情報を整理する。
- 現代医学的な研究によって明らかになった風邪の予防法
コロナと中医
予防
予防:台湾のガイドライン
体質と感染症 ~ 感染に負けない体を作る ~
中医では、体質と感染症の関係が研究されてきた。特に、以下の体質と関係すると言われている。
総論:『温病』と体質
- ① 気虚タイプ
- 気虚体質の診断と養生法
- ② 陽虚タイプ
- 陽虚体質の診断と養生法(オススメ食材など)
- ③ 陰虚タイプ
- 陰虚体質の診断と養生法(オススメ食材など)
- ④ 痰湿タイプ
- 痰湿体質の診断と養生法(オススメ食材など)
- ⑤ 湿熱タイプ
- 湿熱タイプの診断と養生法(オススメ食材など)
病 中
中国から発表されているガイドラインについてまとめる。
① 総論
② 医療観察期
③ 治療:清肺排毒湯
④ 軽症
病 後
① 回復期
温病の治療
温病理論の治療に使う主な薬と使用の目標をまとめる。
(準備中)